白米でハゲる

重度の糖尿病になったなんて、お恥ずかしい話ですね。しかし、だからこそわかったこともたくさんありますし、糖尿病とハゲの関係をみなさんにお話ししたいと思うようになりました。

私か糖尿病だと気づいたのは、60歳のころです。

インドネシアで、長期にわたる仕事をしているときでした。暑いさなか、激しい活動が連日続きました。脱水症状の予防のため、スポーツドリンクを朝に夜に飲み続けていました。すると、体が急激にやせてきたのです。

わずか一週間でウェストも腕の筋肉も細くなり、体重が5キロも減ってしまいました。尿はやけに泡立っています。なめてみると、甘みを強く感じました。

慌てて血糖値を計ると、空腹時で500mg/dLを超えていたのです。正常値は80~110ですから、明らかに異常といえるでしょう。

近年、初夏から初秋にかけて、熱中症を起こして5万人以上もの人が救急車で運ばれています。死の危険性の高い症状だけに、予防法が声高にうたわれますが、熱中症予防のためといってスポーツドリンクをがぶ飲みしては絶対にいけません。スポーツドリンクには、ペットボトルー本(500ml)に20~30グラムもの糖分が入っています。具体的にいえば、スティックシュガー10本分にも相当します。

熱中症が問題なのは、汗として水分と一緒にナトリウムが出てしまうことです。補充しなければいけないのは、糖分ではなく塩分と水分です。ところが最近では、スポーツドリンクが熱中症予防の第一選択肢のようにとり上げられます。そんな情報に惑わされ、スポーツドリンクをがぶ飲みして起こる急性の糖尿病を俗に「スポーツドリンク症候群」といいます。そして、スポーツドリンクのような清涼飲料水も抜け毛を増やす一因になります。

私の場合、長年にわたるストレス過剰の生活の中で暴飲暴食をくり返し、糖質を大量に摂取していたことによって糖尿病になる土台がつくられていたのだと思います。

そこに、ペットボトルを連日がぶ飲みしてしまったために、いっきに血糖値が上がり、重度の糖尿病を起こしてしまったのでしょう。

帰国後、私は糖尿病専門医に主治医になってもらい、食事療法の指導を徹底的に受けました。日本糖尿病学会が推奨する食事療法は、カロリーの数値を重視し、エネルギーの約6割を糖質から摂取するというものでした。

糖尿病になると、食事制限のわずらわしさにつきまとわれることになります。とくに面倒なのはカロリー計算です。身長から1日のエネルギー摂取量の目安を割り出し、その数値を80Kカロリーで割ります。糖尿病の食事療法では80Kカロリーを1単位という呼び方をし、「あなたは、1日に何単位までしか食べてはいけませんよ」と注意を受けるのです。食事に単位をつけて細かな計算をさせるような食事療法を継続するのは大変で、私の高血糖は薬物療法に頼ってようやく安定するようなありさまでした。

このときの食生活をふり返ってみると、私はカロリー制限ばかり考えて食事をしていました。指定の数値以内であれば、主食をきちんととることを指導されていましたから、白米もラーメンも、餃子も、パンも、食べてしまっていたのです。

実は、これがいちばん体にも髪にもよくなかったのです。これこそがハゲの原因のひとつなのです。

糖尿病は、すい臓のラングルハンス島のβ細胞から分泌されるインスリンに問題が生じて起こります。インスリンというホルモンには、血液中のブドウ糖を細胞にとり込ませて、エネルギーとして利用させたり、蓄えさせたりする働きがあります。このホルモンの分泌量が減ったり、その働きが悪くなったりすると、ブドウ糖が細胞内にうまくとりこまれず、エネルギーとして活用されなくなります。血糖値が高くなったり、尿に糖が出るようになったりするのは、ブドウ糖が体内であふれてしまっているためです。私のように急激に体重が減る人も少なくありません。これはとても危険な状態です。

ただ、何よりも怖いのは、合併症です。血管や神経がボロボロになるなど、体のあちこちに障害が生じます。抜け毛が増え、薄毛が進行し、場合によってはツルツルになってしまうのも、合併症の一つといえるでしょう。

生活習慣が原因で生じる糖尿病は、インスリンは分泌されているものの、働きが悪いために起こります。インスリンの活動量が落ちてしまう最大に原因とは、糖質の過剰摂取のせいなのです。ブドウ糖が常に体内に大量に入ってくることによって、β細胞は対応しきなくなってしまい、疲れ切り、機能がおかしくなってしまうのです。

こうして考えてみれば、糖尿病の治療に必要なのは、カロリー計算ではなく、糖質制限であるのは明らかだったのです。

糖尿病だからと、単にカロリー制限をしても、抜け毛は止まらないのです。